GB Tech Trend #046: 新ユニコーン、ヘルスケア企業向けAPI「Truepill」が目指すAmazon化

今回のラウンドを経て企業評価額は16億ドルへと成長し、ユニコーン企業入りを果たしています。

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ユニコーン企業へと評価額を上げた「Truepill」(Image Credit:Truepill)

執筆: Universe編集部

GB Tech Trendでは、毎週、世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。

今週の注目テックトレンド

10月27日、オンライン医療プロバイダー向けに医薬品・処方箋ネットワークを提供する「Truepill」が、1.42億ドルのシリーズDラウンド資金調達を発表しました。今回のラウンドを経て企業評価額は16億ドルへと成長し、ユニコーン企業入りを果たしています。

Truepillが提携するのは「hims」「GoodRx」「K Health」といったオンライン診療を提供する企業です。コロナの影響でオンライン診療が主流となり、デジタル完結する診療体験の社会実装が進みました。ただ、処方箋を受け取るフローも在宅社会に沿った体験になっているかと言えば違います。

医師による診断が手軽にできるようになりましたが、実際に顧客の元へ処方箋を届けるとなると、最寄りの薬局に連絡し、そこから最適な配達方法を選定する必要があります。こうしたフルフィルメント構築には、医療体験構築とは全く違う労力が求められます。そこで登場したのがTruepillです。

Truepillは全米に処方箋フルフィルメント施設のネットワークを所有し、顧客の住む地域に最短で処方箋を届けられるようにしました。クライアント企業はTruepillの処方箋APIを組み入れることで、ワンクリックで処方箋手配ができる配達体制を作ることができるのです。デジタル薬局市場におけるフルフィルメント領域を、ネットワーク型事業形態で抑えたのがTruepillということになります。

利用企業からはAPI導入と自社オンライン医療サービスとの親和性を高く評価されていますが、ヘルスケアEC文脈とのシナジーが高いのも受けています。

たとえば先述した男性医療品サービス「hims」は自社レーベルでの医薬品を開発していますが、himsのプロダクトをTruepillが提携する企業であれば販売できる、「ホワイトレーベル」のような展開も開始しています。Truepillのフルフィルメントを利用するヘルスケア企業であれば人気D2C商品を扱えるようになる、ある種の「相乗り戦略」によりヘルスケア市場のAmazonの市場ポジションも狙うようになっているのです。

当初は処方箋APIの切り口から市場参入をし、ユニコーン評価にまで成長を続けてきたTruepillですが、これからはEC文脈で自社フルフィルメント・ネットワークを最大限活かす戦略が伺えます。

今週(10月26日〜11月1日)の主要ニュース

2.5億ドルの調達を目指していると報道された「Deliverr」(Image Credit:Deliverr)
2.5億ドルの調達を目指していると報道された「Deliverr」(Image Credit:Deliverr)

EC向けフルフィルメント「Deliverr」が2.5億ドルの調達模索

ECフルフィルメント企業「Deliverr」は、Tiger Globalがリードするラウンドで評価額20億ドル、2億5000万ドルの資金調達を目指していると報じられた。なお、同社は3月にCoatueとBrookfield Technology Partnersをリードとした直近のラウンド(シリーズD資金1億3500万ドルと転換社債3500万ドル)を完了している。— 参考記事

人工肉「Impossible Foods」、5億ドル調達を目指す

人工肉を開発する「Impossible Foods」は、70億ドルの評価額で約5億ドルの資金調達に向けて交渉中と報じられた。本ラウンドが実現すれば、同社の価値はライバル企業よりも高くなると予測されている。— 参考記事

インドの美容系EC「Purplle」が6.3億ドル調達

インドのオンライン美容製品販売企業「Purplle」は、ライバルのNykaaがIPOを実行するのと同じ時期に、6億3,000万ドルの評価額で資金を調達していると報じられた。初期の投資家であるSequoia CapitalとBlume Venturesが本ラウンドに参加したという。— 参考記事

音楽配信アプリ「UnitedMasters」、5,000万ドル調達

独立系ミュージシャン向け音楽配信アプリ「UnitedMasters」は、Andreessen Horowitzがリードするラウンドで5,000万ドルを調達し、ポストマネーの評価額は5億5,000万ドルとなった。 同社は、TikTokや、Instagram ReelsやYouTube Shortsなどのショートビデオ機能の人気に乗じた、音楽系スタートアップ企業の一つ。— 参考記事

収入管理アプリ「Able」が320万ドル調達

クリエイター向けの収入管理アプリ「Able」は、Moonshots Capital、Next Coast Ventures、Signal Peak Ventures、LocalGlobeが参加し、Elefundがリードとなって320万ドルのシードラウンドを調達した。— 参考記事

ビザ申請の簡略化を目指す「Atlys」が430万ドル調達

旅行ビザ申請スタートアップ「Atlys」は、Andreessen Horowitzがリードするシードラウンドで430万ドルを調達した。CEOがPinterestのエンジニアとして3年以上勤務していた同社は、Pinterestの共同創業者であるBen Silbermann氏やEvan Sharp氏などからも資金提供を受けている。— 参考記事

3Dキャプチャー企業「Luma」、430万ドル調達

フォトリアリスティックな3Dキャプチャーに特化したスタートアップ「Luma」は、シード資金として430万ドルを調達した。Matrix Partnersがリードし、South Park Commons、Amplify Partners、RFCのAndreas Klinger、Context Ventures、および多数のエンジェル投資家が参加した。創業者の2人は以前、AppleでそれぞれコンピュータビジョンシステムやAR/VRの研究を行っていた。— 参考記事

ソーシャルチャット「Social Chat」が600万ドル調達

ソーシャルコマースのスタートアップ「Social Chat」は、ショッピングアプリWishの元グロース責任者によって設立され、Race CapitalとGradient Venturesの共同出資により600万ドルを調達した。— 参考記事