GB Tech Trend #044: オンライン「K12教育」の新星Outschool、30億ドル評価に

3歳から18歳までの生徒を対象に14万以上のバーチャルな少人数制のクラスを提供しています

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1.1億ドルの調達を発表した「Outschool」(Image Credit:Outschool)

執筆: Universe編集部

GB Tech Trendでは、毎週、世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。

今週の注目テックトレンド

10月14日、オンライン学習プラットフォーム「Outschool」は1.1億ドルの資金調達を実施し、企業評価額が30億ドルに達成したことを発表しました。TechCrunchによると、同社は3歳から18歳までの生徒を対象に14万以上のバーチャルな少人数制のクラスを提供しています。教師の数は600人前後から7,000人以上に増え、クラス予約数は1,500%増加したとのことです。

Outschoolはライブ動画チャット形式での授業を展開しています。あくまでもプラットフォーム事業であるため、学習するための機能のみを提供するSaaSモデルで成長をしてきました。自社では授業コンテンツは持たず、教師が提案する学習コンテンツを承認・配信する事業モデルです。手数料30%を取ることで収益を上げています。

おおよその授業は20ドル前後と、安価かつ高品質な教育をオンラインで受けられます。MOOC(大規模公開オンライン講座)とは違い、少人数のオンラインクラスに特化していますが、たとえば必須科目であれば受講頻度も高くなり、生徒数が少なくとも十分な稼ぎを得られます。

こちらの記事では、とある教師の収入が取り上げられています。最初の月の収入はわずか32ドルだったにも関わらず、3カ月後には同教師が提供する2つの講座だけで5,000ドル近くの稼ぎが得られたそうです。Outschoolに参加するだけで十分に教師が生活費を捻出できるだけの「社会インフラ」としての側面を持つようになり、ここまでの成長を遂げてきたとも言えるでしょう。

さて、Outschoolの特徴は大きく2つ挙げられます。1つはK12向けコンテンツです。同社が参入する市場は幼稚園から高校卒業までをカバーする「K12」と呼ばれる領域になります。次世代向けに教育コンテンツをカスタマイズしていく必要がありますが、この点はプラットフォーマーとしての柔軟性を活かし、面白いコンテンツを幅広く揃えることで対応しています。

たとえばMinecraftを使って仮想都市生活を実感する授業であったり、Fortniteでアステカ文明空間を作り、そこで歴史を学ぶなどのコンテンツが登場しています。トレンド・ゲーム要素を取り入れることで、分厚い教育スタイルを構築できているのがOutschoolです。

もう1つの特徴が福利厚生市場へと手を伸ばす戦略です。最近では企業の従業員向けの教育サービスとして導入されるため、B2Bセールスモデルを拡大しているようです。

同社は大人が週末などの自由時間にオンライン学習する従来型のMOOCではありません。従業員の子供たちにサービス提供する、しかも必須授業も支援する学習塾としての市場領域を戦略的に獲得した点が両親の需要にフィットしました。加えて、個人事業主の高いホスピタリティー性と独自コンテンツ性を伸ばす、昨今の「パッションエコノミー」の時代の流れに乗ったことも注目すべき点です。

今週(10月12日〜10月18日)の主要ニュース

ECブランド・インフルエンサーマーケティング「Grin」(Image Credit:Grin)
ECブランド・インフルエンサーマーケティング「Grin」(Image Credit:Grin)

AI機械学習プラットフォーム「Clarafi」6,000万ドル調達

機械学習とディープニューラルネットワークの専門知識を活用した物体認識システムを開発する「Clarafi」は、シリーズCで6,000万ドルの資金を調達した。今回の資金調達では、NEAがリードを務め、CPP Investments、NextEquity Partners、SineWave Ventures、Trousdale Capital、そしてMenlo Ventures、Union Square Ventures、Lux Capital、LDV Capital、Corazon Capital、NYU Innovation Venture Fundらがラウンドに参加した。— 参考記事

ECブランド向けインフルエンサーマーケ「Grin」が1.1億ドルの大型調達

CRMスタートアップで、Eコマースブランドのインフルエンサーマーケティングに注力する「Grin」は、シリーズBラウンドとして1億1,000万ドルを調達した。本ラウンドは、Lone Pine Capitalがリードし、Bondが参加した。同社は累計1億4530万ドルを調達したこととなる。— 参考記事

インフラ・モニターサービス「AiDash」、2,700万ドル調達

衛星画像とAIを利用してインフラ監視を行っている「AiDash」は、G2 Venture Partnersがリードし、BGV、National Grid Partners、その他ストラティジック投資家が参加した、シリーズBラウンドで2,700万ドルを調達した。これにより、同社は累計3,300万ドルを調達したことになる。— 参考記事

動画インサイト分析サービス「Replai」が470万ドル調達

サンフランシスコとポルトガルを拠点にビデオインテリジェンス技術を開発する「Replai」は、シードラウンドとして470万ドルを調達した。Hoxton Venturesが本ラウンドをリードし、Sonae IM、Lux Capital、Sequoia Capital、Accelらが参加した。— 参考記事

コーディング管理プラットフォーム「Spacelift」、1,500万ドル調達

「Infra as a Code」として管理プラットフォームを提供する「Spacelift」は、Insight Partnersがリードとなり、Blossom Capital、Inovo Venture Partners、Hoxton Venturesらが参加したシリーズBラウンドで1,500万ドルを調達した。— 参考記事

撮影動画分析プラットフォーム「Spot AI」、2,000万ドル調達

撮影されたカメラの種類や品質に関わらず、ビデオ映像を言葉やフレーム内の画像として読み取れるソフトウェアプラットフォームを開発する「Spot AI」は、Redpoint VenturesがリードするシリーズAで2,000万ドルを調達した。Bessemer Venture Partnersもラウンドに参加した。これにより、Village GlobalやStanford StartXなどからの調達も含め、2,200万ドルを調達したこととなる。— 参考記事

決済インフラ「Pagos」が1,000万ドル調達

BraintreeとPayPalの元幹部によって設立され、完全分散型のペイメント・インテリジェンス・インフラストラクチャのスタートアップである「Pagos」は、Underscore VCとPoint72 Venturesの共同出資により、1,000万ドルのシード資金を調達した。— 参考記事

マッシュルーム・メーカー「Smallhold」2,500万ドル調達

マッシュルーム専門メーカー「Smallhold」は、シリーズAラウンドとして2,500万ドルを調達した。Astanor Venturesがリードし、Energy Impact Partners、Wheatsheaf Group、AlleyCorp、Almanac Insightsらがラウンドに参加した。— 参考記事