GB Tech Trend #043: 介護領域のユニコーン「Honor」のOS戦略

新たなユニコーン企業が誕生しました。

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今回ユニコーン企業へと成長した「Honor」(Image Credit:Honor)

執筆: Universe編集部

GB Tech Trendでは、毎週、世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。

今週の注目テックトレンド

新たなユニコーン企業が誕生しました。10月5日、介護スタートアップ「Honor」はシリーズEラウンドとして融資を含めて3億7,000万ドルを調達し、評価額が12億5,000万ドルを超えたと発表しました。TechCrunchによれば同社は現在、世界中で毎月10万人以上の高齢者にサービスを提供しており、年間8,000万時間以上のケアを提供しているとのことです。

Honorの強みが介護士と高齢者ユーザーのマッチング精度です。高齢者の言語・人種・趣味趣向を筆頭とする属性データと、介護士をアルゴリズムを用いて精度高くマッチングさせているそうです。

データ分析対象はマッチングに留まらず、Honorが雇うサービス提供者「Care Pros」たちのパフォーマンス・スケジュール管理も適用されます。ユーザーとの接点、その全てを分析し、コーチングに活かすことで経営最適化を目指しており、いわば老人介護にAIアルゴリズムを適用させて成長してきたのがHonorとも言えるでしょう。

Honorは同じくシニアケア領域に参入している「Home Instead」をつい数カ月前に買収しています。Home Instedのプレスリリースでは、「21億ドル以上の在宅介護サービス収入を誇り、5,000億ドルと予測される在宅介護産業における最大のプレーヤーであることを確信している」と述べています。

Honorの特徴は「Senior Care as a Service」の戦略にあります。同社は在宅医療機関にHonorの仕組みを「OS」として利用できるSaaSパッケージの提供を開始しており、「Powered by Honor」として医療機関の在宅ケアサービスを事業者と一緒に取り組むことで、関係企業のDXニーズも同時に満足させようとしています。

こうしたSaaSの流れは日本でも十分に考えられるでしょう。

米国シニアケア市場では、大学生と高齢者をマッチングさせる「Papa」にも注目です。同社は4月に6,000万ドルを調達しており、介護スタートアップとして成長株であることは間違いありません。Papaは保険会社との提携を進めており、現在80社を通じて保険サービス・ベネフィットとして介護医療を提供しているとのことです。Papaの場合はHonorとは違い、直接的な介護サービス提供に重きを置くのではなく、話し相手になってあげたりするコミュニケーションに重点を置いています。コロナ禍で憚られる対面サービスではなく、バーチャルでも完結する体験を提供することで、比較的柔軟なビジネスモデルを敷いています。

シニアケア領域に参入するプレイヤーは他の市場と比べて少ない印象ですが、うまくSaaS化に取り組んできた企業は着実な成長を遂げています。日本は「介護先進国」であるとも言えるため、こうした事例で参考となる点は多々ありそうです。

今週(10月5日〜10月11日)の主要ニュース

大型調達を果たしたノートアプリ「Notion」(Image Credit:Notion)
大型調達を果たしたノートアプリ「Notion」(Image Credit:Notion)

ノート管理サービス「Notion」が2.75億ドル調達

創業9年目のノートアプリ「Notion」は、Coatue ManagementとSequoia Capitalをリードに、2億7,500万ドルの調達を実施した。このラウンドにより、同社の価値は103億ドルになるとのこと。— 参考記事

決済管理システム「Modern Treasury」が8,500万ドル調達

ペイメント・オペレーションサービス「Modern Treasury」は、シリーズCラウンドとして8,500万ドルを調達した。本ラウンドはAltimeter Capitalがリードし、BenchmarkとQuiet Capitalが参加した。— 参考記事

小児医療サービス「Brave Care」が2,500万ドル調達

対面式クリニックの運営や遠隔地でのケアを提供する小児医療機関「Brave Care」は、医師向けサービスを提供するMednaxがリードするシリーズBで2,500万ドルの資金を調達した。— 参考記事

Zoomベースの面接サービス「BrightHire」が2,050万ドル調達

Zoomを利用した就職面接プラットフォームを提供する「BrightHire」は、シリーズBラウンドとして2,050万ドルを調達した。01 Advisorsがリードし、Index VentureとZoom Apps Fundが参加した。— 参考記事

BAAS企業「Productfy」が1,600万ドル調達

Banking-as-a-Serviceプラットフォームである「Productfy」は、CM Venturesをリードに1,600万ドルのシリーズAラウンドを調達した。本ラウンドには、Point72 Ventures、500 Startups、Envestnet、Yodleeも参加している。— 参考記事

ペット向け健康企業「Alpha Paw」が800万ドル調達

ペットに特化したウェルネス企業「Alpha Paw」は、Nordic EyeをリードにシリーズAラウンドとして800万ドルを調達した。— 参考記事

著名投資家Mark Cubanも出資する「Otto」が450万ドル調達

カー・エクイティを活用したローンを提供している「Otto」が、450万ドルのシードラウンドを調達した。Uncommon Capitalがリードし、Pelion Venture Partners、1930 Capital、Bloom VP、Spacecadet Ventures、Mark Cuban氏らが参加した。— 参考記事

インドの仮想通貨プラットフォーム「Stader Labs」が400万ドル調達

インドを拠点とする暗号通貨の掛け金管理プラットフォーム「Stader Labs」は、シードラウンドとして400万ドルを調達した。Pantera Capitalが本ラウンドをリードし、Coinbase Ventures、True Ventures、Jump Capital、Ledgerprimeらが参加した。— 参考記事