GB Tech Trend #042: パターンで量産、超カジュアルゲーム「Voodoo」の超高速ローンチ戦略
ユーザーに好まれるゲームは、ある種の「黄金律」が存在していることを見抜いたのです。

執筆: Universe編集部
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凄くシンプルだけど、なぜかやり込んでしまう。モバイルアプリ市場でこの「ハイパーカジュアルゲーム」領域を開拓しているのがフランス出身のスタートアップ「Voodoo」です。同社はTencent(腾讯)らから累計5億ドル超の資金を調達しています。そして先日、イスラエル拠点のゲーム企業「Beach Bum」の買収を発表しました。TechCrunchによると、Beach Bumの過去12カ月の収益は7,000万ドルを超えているとのことです。
Voodooが参入するハイバーカジュアルゲームの特徴は、ユーザーサイクルの速さにあります。誰もが一瞬でゲーム性を理解でき、単一アクションでやり込めることから中毒性もある一方、ゲームの深みや新しい展開がほとんどないため飽きも早くやってきます。
この領域でVoodooはいかに勝ち抜けたのか。それが超高速とも言えるローンチ戦略です。
Voodooが「なぜかやり込んでしまう」ゲームを量産する秘訣は、市場早期からユーザー行動を徹底的に分析して発見した「10-20ほどのパターン」にあるそうです。ユーザーに好まれるゲームはタイトルや世界観を変えたとしても、仕組みにある種の「黄金律」が存在していることを見抜いたのです。
Voodooは基本的な開発コンセプトに一貫性を持たせつつ、少しだけコンテンツを変えるだけのアプリタイトルを量産しました。競合する開発スタジオが最大2本ほどしかアプリを出せない中、7本もタイトルをリリースしています。
各タイトルは過去作品の仕組みを応用できるため、開発テンプレート化にも成功しており、最短工数でのローンチを可能にしたようです。デザインも非常にシンプルで凝りすぎないようにしているため、最低限しか着手しません。PDCAを高速で回す開発スピードが世界展開の大きな後押しをしています。
その上で、Voodooブランド下で遊び続けるある種の「スーパーアプリ戦略」を積極的に推し進めています。アプリを乗り換えたとしても、次に楽しむタイトルもVoodooが提供し、ユーザーをゲームサイクルから離さない戦略にすることでLTVの最大化を図る、というわけです。ハイバーカジュアルゲーム領域において最適な開発戦略を構築しているのがVoodooです。
収益モデルにも動きがあります。それが今回話題となった「Beach Bum」の買収です。
Voodooはとにかく早くローンチし、米中アプリ市場を中心にそのニーズを検証します。世界各地100超の開発スタジオから適切な市場を選び、現地アプリストアでタイトルをローンチします。初日リテンション率が50%以上でなければタイトルを続かせることはなく、すぐに違うパッケージの開発へと移行するそうです。
この高いリテンション率を保ち、かつCPI(Cost Per Install)を圧倒的に下げるため、Voodooは独自の広告ネットワークを構築して運用しています。
一方、今回買収されたBeach Bumはハイバーカジュアルゲームと異なり、アプリ内課金で収益を高く上げるモデルです。ゲームタイトルはシンプルで似ていますが、収益軸はVoodooとは異なるのです。つまり、広告・高速回転でモデルを構築したVoodooは「ハイバーカジュアル」の軸を持ちつつ、コアファンの課金が期待できる「カジュアルゲーム」にも収益領域を広げようとしている、というわけです。
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