GB Tech Trend #041: ライブ動画コマース「NTWRK」が見出した勝ち筋

NTWRKは質の高い番組配信をする「キュレートメディア」として市場に認知されています。

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5,000万ドルの調達を発表したNTWRK(Image Credit:NTWRK)

執筆: Universe編集部

GB Tech Trendでは、毎週、世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。

今週の注目テックトレンド

9月24日、ライブ動画コマースアプリ「NTWRK」の5,000万ドルの資金調達が発表されました。本ラウンドをリードしたのはGoldman Sachs Asset ManagementとGucci、Yves Saint Laurenなどを保有するブランド運営企業「Kering」でした。

NTWRKはZ世代向けにライブ動画イベントおよびコマースプラットフォームを運営しています。同社の強みは大規模オンライン・イベントを通じたユーザー獲得です。10〜20代から圧倒的な支持を集めるBillie Eilishを筆頭に、多くの著名アーティストと組んだイベント開催実績を持ちます。2020年には30以上のブランドを招致した音楽フェス・イベント「TRANSFER」を、25万人が視聴したアートイベント「BEYOND THE STREETS」を開催しました。

イベント以外にも1日2回ほどライブ動画番組が配信されます。番組配信者は限定生産もしくは期間限定商品を通知・販売できる「Drop機能」を使えます。同機能は米国のInstagramでも5月に実装されており、FOMO(取り残されることへの恐れ)を演出できることから購買体験を加速するものとして注目を集めています。

Digidayによると、登録ユーザー数は100万を超え、月間視聴者数は1,000万に上るとのことです。今後は1日10回以上番組を配信しておりユーザー層の85%が18~34歳とも伝えられています。

NTWRKは質の高い番組配信をする「キュレートメディア」として市場に認知されています。同社のプレスリリースでは、中国のライブ動画コマース市場規模は3,000億ドル。他方、米国は110億ドルで伸びしろが大きくあると予想しています。

市場規模が未だに小さい米国ではユーザーを0からかき集めて配信ネットワークを作るより、インフルエンサーを主体としたイベント集客のほうが市場を立ち上げやすいと考えたのがNTWRKです。番組編成を編集することで、ユーザー価値の高い内容を届ける体制を採用しています。

同じくライブ動画配信アプリ「Popshop Live」は、個人ユーザーが配信できるC2Cプラットフォームとしての拡大を目指しており、「NTWRK」との差別化を明確にしています。一方、NTWRKの事業モデルを成立させるには、ブランド・インフルエンサーの獲得パイプラインを先に持つ必要があり、難易度は比較的高めです。この点、創業者はカリフォルニアで開催された音楽イベント「ComplexCon」の立ち上げ経験があり、NTWRKの事業成長の糧になっていると考えられます。

NTWRKはコンテンツ力を武器に市場拡大を目指しています。InstagramやYouTubeを代表とする大手配信プラットフォームには獲得できない配信番組を持つことでここまで勝ち抜いてきました。2Cメディア・サービスには欠かせないイベント開催ネットワークをアンフェア・アドバンテージ(不公平な競合優位性)として成立させることに成功しているので、このまま成長を続ければ、GAFAや大手TV企業により買収され、ユニーク動画コンテンツがそのまま引き抜かれるシナリオも考えられるのではないでしょうか。

今週(9月20日〜9月27日)の主要ニュース

エドテック大手「Udemy」(Image Credit:Udemy)
エドテック大手「Udemy」(Image Credit:Udemy)

エドテック「Udemy」、上場へ

オンラインコースの販売プラットフォーム「Udemy」は、早ければ来月にもIPO申請するのではないかと報じられている。昨年11月に33億ドルの評価額で5,000万ドルを調達した同社は、60億ドルから80億ドルの初期評価額を目標にしているとのこと。— 参考記事

セラピスト向けサービス立ち上げプラットフォーム「Grow Therapy」1,500万ドル調達

セラピストが保険適用のプライベートクラスを立ち上げるのを支援する「Grow Therapy」は、SignalFireがリードとなったシリーズAで1,500万ドルの資金を調達した。— 参考記事

戸建賃貸への投資プラットフォーム「Awning」930万ドル調達

個人が一戸建て賃貸住宅に投資できる「Awning」は、Global Founders Capitalをリードに930万ドルの資金調達をした。本ラウンドにはMassMutual Venturesが参加した。— 参考記事

金融ドキュメント・アナリティクス「Ocrolus」8,000万ドル調達

金融文書分析自動化プラットフォーム「Ocrolus」が、シリーズCラウンドとして8,000万ドルを調達した。Fin VCがこのラウンドをリードし、Thomvest Ventures、Mubadala Ventures、Oak HC/FT、FinTech Collective、QED Investors、Bullpen Capital、ValueStream Ventures、Laconia、RiverPark Ventures、Stage II Capital、Cross River Bankらが参加した。同社は現在、累計1億ドルを調達し、評価額は5億ドルに達している。— 参考記事

サイエンス市場向けロボット「Opentrons Labworks」が2億ドル調達目指す

生命科学者の実験プロセスの自動化を支援するロボット企業「Opentrons Labworks」は、Softbankがリードとなる形で2億ドルの調達を控えていると報じられた。— 参考記事

アルコールEC「Provi」7,500万ドル調達

アルコール銘柄ECプラットフォーム「Provi」は、D1 Capital Partnersをリードに、Bessemer Venture Partners、Nosara Capital、CPMGが参加するシリーズCラウンドで7,500万ドルの資金を調達した。同社は累計1億2500万ドルを調達し、現在の評価額は7億5000万ドルに達している。— 参考記事

DaaS企業「Cobo」が4,000万ドル調達

中国・北京を拠点とするDeFi-as-a-service企業「Cobo」は、DST Global、A&T Capital、IMO Venturesが共同でリードするシリーズBラウンドで4,000万ドルを調達した。— 参考記事

HRテック「Crosschq」3,000万ドル調達

リクルーティングテクノロジーを提供する「Crosschq」は、以前にクローズしたシリーズAラウンドに1,650万ドルを追加し、ラウンド総額を3,000万ドルとした。本ラウンドはTiger Globalがリードし、GGV Capital、Bessemer Venture Partners、SAP、Rocketship.vc、LatticeのCEOであるJack Altman氏らが参加した。— 参考記事