GB Tech Trend #036: Robloxがチーム向けDiscordの「Guilded」を買収——ゲーム・コラボレーション市場の可能性

大手サービスの牙城が崩されつつあります。

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Robloxによる買収が報道されたGuilded。Image Credit: Guilded。

執筆: Universe編集部

グローバルテックニュースでは、毎週、世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。

今週の注目テックトレンド

大手サービスの牙城が崩されつつあります。

2億人以上のユーザーを抱える世界最大のゲーム用チャットプラットフォーム「Discord」。2018年の1.5億ドルの調達ラウンドでは、企業評価額が20億ドルを超えています。この巨大にプラットフォームに挑むのが、同じくゲーマー向けチャットプラットフォームを開発する「Guilded」です。8月17日に大手ゲームプラットフォーム「Roblox」によって買収されたという報道がありました。

同社は、プライベートエクイティの投資会社「Matrix Partners」がリードする700万ドルのシリーズAラウンドを昨年実施しています。このラウンドに参加した投資家には、Initialized Capital、Susa Ventures、Sterling.VCが含まれています。

Guildedは、ゲーマーチームメンバー間の円滑なコミュニケーション、しっかりとした組織運営が求められる競争ゲームやeSportsのために設計されたチャットプラットフォームを開発しています。

同サービスが狙うのは、Discordが取りこぼしつつあるチーム層でした。Discordが多人数コミュニケーションを想定している一方、Guildedはやや少数のチーム構成で、密なコミュニケーションを必要とするシチュエーションを狙っています。ゲーマーチームが必要とするスケジューリングおよびカレンダー機能が差別化ポイントだそうです。

他方、膨大なユーザーベースを確立しているDiscordは、オンラインストア「Nitro」を持っています。99ドル/年または9.99ドル/月を支払うことで、ストアから1,000ドル以上の価値のあるゲームに無制限にアクセスでき、追加のチャット機能が使えるようになるサービスです。「コミュニケーションプラットフォーム」と「コンテンツサービス」の2軸を結びつけ、サブスク収益化に成功しているのです。加えて、Discordには個人の開発者が発表するゲーム収益の90%を還元する仕組みがあります。

PC用デジタルゲームストアとしては最大手「Steam」や「Fortnite」の開発企業であるEpic Gamesが売上の30%を持っていってしまう点において価格優位性があるのです。

さて、DiscordとGuildedの関係性は、Skypeに挑んだZoomに似ています。ユーザーが求めているものを作れば、市場が巨大なため競合であっても成長が望めることを示しています。例えば今回のGuildedに関しては、「チーム性」に重きを置いて、市場シェアの獲得に取り組んでいました。Robloxはチーム・コラボレーションに強いGuildedを買収することによって「個人」ではなく「ゲーム・チーム需要」を丸ごと抱えようと考えているはずです。

前述したようなゲーマー向けエコシステムがDiscordの強みですが、仮にGuildedが同じようにチームゲーマーに特化した関連サービスをサブスクで提供したりすれば脅威になりそうです。

今週(8月16日〜8月22日)の主要ニュース

Amazonブランドのアグリゲーターとして成長する「D1 Brands」。Image Credit: D1 Brands。
Amazonブランドのアグリゲーターとして成長する「D1 Brands」。Image Credit: D1 Brands。

ブランド・アグリゲーター「D1 Brands」が1.2億ドル調達

Amazonブランドのアグリゲーターで、同社オンラインマーケットプレイスにおけるサードパーティセラーの成功を目的とする「D1 Brands」が、シリーズAラウンドとして1億2300万ドルを調達した。本ラウンドでは、CoVentureとCrossbeam Venture Partnersが共同でリードし、ID8 Investmentsが加わった。— 参考記事

金融サービスプラットフォーム「DriveWealth」が4.5億ドルの大型調達

ブローカー・インフラストラクチャとして、企業が自社製品の中にトレーディング・投資サービスを組み込むことを可能とする「DriveWealth」は、AccelとInsight Partnersから28.5億ドルの評価額で4.5億ドルの調達を行なった。その他の投資家には、Greyhound Capital、SoftBank、Base 10、FlightDeck、暗号通貨取引所のFTX、そして以前からの出資者であるPoint72 VenturesとFidelityが含まれている。— 参考記事

エージェンシー・プラットフォーム「Breef」が350万ドル調達

ブランドとエージェンシーを結びつけるエージェンシーマーケットプレイス「Breef」は、Greycroftがリードとなるラウンドで350万ドルの資金を調達した。本ラウンドには、Rackhouse Ventures、The House Fund、Lance Armstrong、640 Oxford Venturesなどの投資家が参加している。同社はこれで450万ドルを調達したことになる。— 参考記事

ソーシャル音楽アプリ「Earbuds」が300万ドル調達

SpotifyやApple Musicと直接統合されたソーシャルミュージックアプリ「Earbuds」は、シリーズAラウンドとして300万ドルを調達した。本ラウンドでは、Ecliptic Capitalがリードし、Andre Agassi FoundatioとLFG Ventures社が参加した。— 参考記事

心電図読み取りAI「Cardiomatics」が320万ドル調達

心電図読み取りの自動化技術を開発した、ポーランドのヘルステックAIスタートアップ「Cardiomatics」は、320万ドルのシード資金調達を発表した。中東欧のベンチャー企業であるKaya VCがこのラウンドをリードし、Nina Capital、Nova Capital、Innovation Nestが参加した。また、ラウンドには、ポーランド国立研究開発センターからの100万ドルの非株式投資も含まれているという。— 参考記事

衛星画像提供サービス「Urban Sky」が410万ドル調達

マイクロバルーンから衛星よりもはるかに高い解像度の画像を提供する「Urban Sky」は、Catapult VenturesとUnion Labsがリードし、TenOneTen Ventures、NewStack Ventures、Techstarsが参加したラウンドにて、410万ドルのシード資金を調達した。— 参考記事

データ分析プラットフォーム「Databricks」が15億ドルの大型調達目指す

統合データ分析プラットフォーム「Databricks」は、Morgan StanleyがリードするシリーズHラウンドで、評価額380億ドルで少なくとも15億ドルを調達すると報じられている。既存の支援者には、Franklin Templeton、Fidelity、Whale Rock、AWS、CapitalG、Microsoft、Salesforce Venturesなどがいる。— 参考記事