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GB Tech Trend #034: 注目集まる「ペットの処方箋配達」——獣医診断市場に商機あり
過去10年弱、米国の処方箋デリバリー市場にはさまざまなプレイヤーが参入し、イノベーションが起きました。
執筆: Universe編集部
グローバルテックニュースでは、毎週、世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。
※編集部がお休みだったため、今週2本配信します。
今週の注目テックトレンド
過去10年弱、米国の処方箋デリバリー市場にはさまざまなプレイヤーが参入し、イノベーションが起きました。
リモート診察を受けた後は、オンライン上で処方箋が処理され、最寄りの薬局デリバリー事業者から自宅へ配達される仕組みが整いました。Amazonも本格参入し、薬局へ出向いて処方箋をもらうといった体験は代替されつつあります。
そして、これまで巨大薬局市場で起きていたオンライン化トレンドは「ペット市場」にも拡大しています。8月に2,000万ドルの調達を発表した「Mixlab」はその一例です。同社は動物薬局として、獣医師が薬を処方し、それをペットの飼い主に即日で届けることができるデジタルプラットフォームを提供しています。自社独自の調剤薬局を運営しており、味付けや量を調整した薬をオンデマンドで作る機能を有しているそうです。
TechCrunchの記事によれば、過去1年間、家にいる人が増えたことでペットのオンライン獣医師の診察回数も増加したとのことです。コロナ禍が医療体験のオンライン化を加速させたのは日本でも同様の現象が発生しました。続けて、世界のペットケア産業も活況で、2020年には2,080億ドルとされていたものが、2030年には3,430億ドルに達すると予測されています。
オンライン進出した医療サービス提供者が増加するとともに、オンライン処方箋事業者へのニーズも増加していくのがこれまでの対人市場で起こっていたトレンドです。実際に「PillPack」や「TruePill」が急成長を遂げています。
Mixlabが狙うのはまさにこのトレンド転換です。
これまでに動物病院市場の新興プレイヤー「Modern Animal」や「FirstVet」などが、事前予約やオンライン診察といったモダンな医療体験を提供しています。こういった動物病院市場がオンライン進出を遂げていく中で、最初に選ばれる処方箋事業者の座を狙っていると言えるでしょう。
今後は自社薬局拠点を他事業者にも解放し、APIで繋ぐだけであらゆる獣医師が処方箋デリバリーサービスを提供できるようになる、いわば「ペット処方箋版AWS」のような、獣医市場の機関システムとしての動きも果たすかもしれません。
「動物」と一言でいっても、犬や猫以外に種類は多岐にわたります。どんな種類の動物に対しての処方箋が注文されたとしても処理できる一大薬局システムが存在すれば、大いに使われると予想されます。世界中どこにいても安心して動物に処方箋を届けられるフルフィルメント需要とも言い換えることができますが、Mixlabが参入するのはまさにこうした市場機会です。
前週(8月2日〜8月8日)の主要ニュース
顧客LTVを最大化させるマーケティング企業「Bluecore」がユニコーン企業へ
小売業者向けのマーケティング企業「Bluecore」は、シリーズEラウンドとして1億2,500万ドルを調達し、10億ドルの企業価値をつけた。ECパーソナライズ・プラットフォームと称してサービス体験を提供する。Georgian Partnersがリードし、FirstMark、Norwest、Silver Lake Watermanらが参加した。— 参考記事
新たなビジネス向けSNS「Polywork」が350万ドル調達
ニューヨークを拠点とする「プロフェッショナル向けSNS」を謳う「Polywork」は、350万ドルの調達を実施した。Andreessen Horowitz が本ラウンドをリードし、Caffeinated Capital、Goldcrest Capital、Bungalow Capital、20VC、Elad Gil、Nat Friedman、Anthony Pompliano、Ari Emanuelらが参加した。— 参考記事
医療機関向けAPIプラットフォーム「Verifiable」が1,700万ドル調達
医療機関の一次ソース検証を自動化する「Verifiable」は、Altman Brothersがリードし、Craft VenturesとFlexportのRyan Petersen氏、RipplingのParker Conrad氏、FrontのMathilde Collin氏などの個人投資家グループが参加したシリーズAラウンドにて1,700万ドルの資金を調達した。— 参考記事
欧州の新興モビリティ企業「Voi」が4,500万ドルの新規調達
スウェーデン・ストックホルムに本社を置くマイクロモビリティ企業で、E-スクーターのレンタルを展開する「Voi」は、以前からの支援者であるThe Raine Groupがリードするラウンドにて4,500万ドルを調達。無名の新規支援者やVNV Globalなどの出資者も参加。今回の資金調達により、Voiの累計調達楽は2億500万ドルとなった。— 参考記事
デザイナー向けコラボレーションツール「Zeroheight」が1,000万ドルの調達
UXコンポーネントの文書化と管理を一元的に行うことで、デザインチームがUX提供のプロセスを効率化するSaaS「Zeroheight」は、Tribe Capitalをリードに、Adobe、Y Combinator、FundersClub、Expa、GitHubの共同創業者であるTom Preston-Werner氏などが参加するシリーズAラウンドにて1,000万ドルを調達した。— 参考記事
教育ソフトウェアを提供するB2Bサービス「GoGuardian」が2億ドルの新規調達
幼稚園から高校までを対象にした教育ソフトウェアを販売する「GoGuardian」が、Tiger Globalから2億ドルの資金調達実施した。同社はSumeru Equity Partnersなどからも資金提供を受けている。— 参考記事
急成長中のイベントプラットフォーム「Hopin」が4.5億ドルの大型調達
ロンドンを拠点とするオンライン・イベントプラットフォーム「Hopin」は、シリーズDラウンドとして4億5,000万ドルを調達した。Arena HoldingsとAltimeter Capitalがリードし、Adams Street Partners、Untitled Investments、XNが加わった。初期投資家としてはAndreessen Horowitz、DFJ Growth、General Catalyst、GIC、IVP、Northzone、Salesforce Ventures、Slack Fund、Temasek、Tiger Globalが名を連ねている。同社の累計調達額は10億ドルを超えている。— 参考記事
デバイス・リセールプラットフォーム「Refurbed」が5,400万ドル調達
ドイツを拠点とする再生電子機器のオンラインマーケットプレイス「Refurbed」は、Evli Growth PartnersとAlmaz Capitalをリードに、シリーズBラウンドとして5,400万ドルを調達した。本ラウンドの他の出資者には、Speedinvest、Bonsai Partners、All Iron Venturesらが名を連ねる。— 参考記事