GB Tech Trend #030: 中小ECの脱Amazonを実現する「フルフィルメント民主化」、日本でも広まるか

6月29日に「ShipBob」が2億ドルの大型資金調達を発表するなど、ECを支えるフルフィルメント・システムの外注が進みつつあります。

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2億ドルの調達を果たしたShipBob。Image Credit: ShipBob。

執筆: Universe編集部

グローバルテックニュースでは、毎週、世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。

今週の注目テックトレンド

6月29日に「ShipBob」が2億ドルの大型資金調達を発表するなど、ECを支えるフルフィルメント・システムの外注が進みつつあります。

TechCrunchによれば、同社は500以上のECプラットフォーム企業と提携しており質の高いフルフィルメント体制を構築できるバックエンドシステムを提供しています。すでに黒字化も達成しているそうです。

ShipBobは米国・カナダ・ヨーロッパ・オーストラリアの約20拠点で倉庫を運営しており、顧客EC業者がこれら倉庫を利用して商品の保管・配送することができる一貫したフルフィルメント・サービスを販売しています。加えて、Amazonを筆頭に、WalmartやShopify、BigCommerce、Wix、Square、Squarespaceを含むパートナーと提携し、これらのプラットフォームを利用する業者向けにサービス提供してます。顧客が購入ボタンを押した後に発生する、注文書の処理から物流業者手配まで、ほぼ全ての処理を担っているのがShipBobです。

ShipBob以外に、ヨーロッパを拠点とする「Byrd」も1,900万ドルの調達に直近漕ぎ着けています。同社はオーストラリアを拠点としてイギリス、ドイツ、オランダ、フランスにも拡大をしています。こちらの記事によると、15のフルフィルメント・センターと200以上の顧客企業を保有しているそうです。

いずれの場合にも、中小EC企業のフルフィルメント・ニーズを支えています。こうした零細企業はAmazonのマーケットプレイスに頼らざるを得ない事情がありました。というのも、自社ECサイトやその他プラットフォーム上で商品販売する選択肢は常にありますが、Amazonが展開する圧倒的なフルフィルメント力によって全く競合優位性を維持できていなかったのです。

Statistaによると、Prime会員の実に79%もの人が無料配達サービスを理由に会員サービス継続をしているというデータもあります。とはいえ、ここに来て急に一般顧客ニーズを満たすべく、Amazon同様のフルフィルメントを事業者らが構築できるわけもありません。

逆に言えば企業データを独占しているAmazon依存から脱却するためにも、強力なフルフィルメントを手軽に利用できるニーズというものは強くあったのです。「フルフィルメントの民主化」というニーズを一身に受けているのがShipBobやByrdというわけです。

実は以前にも米国で反Amazonの旗手として登場したフルフィルメント企業がありました。それが「ShopRunner」です。顧客は年間79ドルを支払えば、ShopRunnerの提携ECでショッピングをする際、2日以内の配達・返品無料サービスを受けられます。決済時にクレジットがなくとも分割払いを選択できる「Affirm」のように、APIを繋いでおけば配達指定ページにオプションが表示される具合です。同社はFedexによって買収されています。

ここまで説明してきた市場動向を日本で聞くことはありませんが、いずれはやってくることでしょう。たとえば「BASE」や「STORES」と連携してくるフルフィルメント・プレイヤーが登場するかもしれません。

今週(7月5日〜7月11日)の主要ニュース

ドキュメント共有サービス「Coda」。Image Credit: Coda。
ドキュメント共有サービス「Coda」。Image Credit: Coda。

ドキュメントサービス「Coda」が1億ドルの大型調達

カスタマイズおよびコラボレーション可能なドキュメント共有サービスを提供する「Coda」は、オンタリオ州教職員年金委員会がリードし、Kleiner Perkins、General Catalyst、Greylock、Khosla Ventures、Madrona Ventures、Underscore VC、NGP Capital、Renegade Partnersらが参加するラウンドにて、14億ドルの評価で1億ドルを調達した。同社の累計調達額は少なくとも2億4000万ドルに達している。— 参考記事

オンデマンド派遣アプリ「Instawork」が6,000万ドルの調達

ギグワーカーやホスピタリティビジネス向けのオンデマンド人材派遣アプリ「Instawork」は、Craft Venturesを中心に、Greylock、Corner Ventures、Four River Group、WndrCo、Landry’sやHouston RocketsのオーナーであるTilman Fertittasなどが参加し、シリーズCで6000万ドルの資金を調達しました。また、初期の投資家であるBenchmark、Spark Capital、GV、Burst Capital、SV Angelも参加している。— 参考記事

IPOからの転換を図った韓国大手食料品スタートアップ「Kurly」が2億ドル調達

韓国を拠点に食料品配送サービスを展開する「Kurly」は、Aspex Management、DST Global、Sequoia Capital China、Hillhouse Capitalらが共同でリードするシリーズFラウンドで、評価額22億ドルにおいて2億ドルを調達した。このラウンドには、CJ LogisticsとMillennium Managementも参加しており、同社の資金調達総額はおよそ4億8,000万ドルに達している。— 参考記事

大手配車サービス「Ola」が5億ドルの大型調達実施

インドのムンバイを拠点とする配車サービス企業「Ola」は、TemasekとWarburg Pincusらから5億ドルを調達。共同創業者でCEOのBhavish Aggarwal氏もこのラウンドに参加したという。— 参考記事

Arianna Huffington氏が創業したウェルネス企業「Thrive Global」が8,000万ドル調達

従業員向けウェルネス企業「Thrive Global」は、Kleiner PerkinsとOwl Venturesが共同でリードするシリーズCラウンドで8,000万ドルを調達した。Thrive社は最終的に株式公開できるとKleinerは答えているという。— 参考記事

ブラジルの福利厚生スタートアップ「Flash」2,200万ドル調達

ブラジル・サンパウロを拠点とし、ブラジル企業の従業員向けに福利厚生プラットフォームを提供する「Flash」は、Tiger GlobalをリードにCitius、Kauffman Fellows、そして以前からの支援者であるMonasheesとGlobal Founders Capitalらが参加したシリーズBラウンドで2,200万ドルの資金を調達した。— 参考記事

保育マッチングサービス「Otter」、著名VCらから2,300万ドル調達

保育を必要とする親と専業主婦の親を結びつける保育マーケットプレイスを提供する「Otter」はSequioa CapitalがリードするシリーズAラウンドで2,300万ドルを調達した。このラウンドには、Abstract Ventures、Thrive Capitalのほか、昨年秋に480万ドルのシードラウンドを行った際に出資したAndreessen Horowitzも参加している。— 参考記事

ライブコマースで急成長する「Popshop Live」、2,000万ドル調達

ライブストリーム・ショッピングアプリ「Popshop Live」は、シリーズAで2,000万ドルを調達した。Benchmarkがリードし、TQ Ventures、Mantis VC、Access Industries、SV Angelに加えて、Floodgate、Abstract Ventures、Long Journey Venturesらが参加した。— 参考記事