GB Tech Trend #026: 資材「サンプル取り寄せ」にみる特化型物流の可能性

領域特化型の形で、Amazonにも似た業態のスタートアップが登場しています。

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1億ドルの大型調達を果たした「Material Bank」。Image Credit: Material Bank。

執筆: Universe編集部

グローバルテックニュースでは、毎週、世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。

今週の注目テックトレンド

領域特化型の形で、Amazonにも似た業態のスタートアップが登場しています。その一つが「サンプル素材」市場です。

建築家やデザイナーが仕入れるサンプルデザイン(カーペットやタイル、壁など)のことで、ここには届いてから保存しておいたとしても、いざ倉庫から引っ張り出してみると品質が担保されていないという課題が発生していました。

仕入れた時と状態が変わってしまっているのです。そのため、必要となった際にはすぐにでも新しい物を手配して、クライアントに確認してもらい、プロジェクトを進める必要が出てきます。

新しいサンプルを頼んだ際、1つのパッケージが明日届くかもしれないですし、3日後には2つのパッケージ、さらに1週間後にはさらに多くのパッケージが届くかもしれません。配達日時が読みにくいので、クライアントにサンプルを見せるために日程を調整するなど多くのコストが発生します。注文先を探すのも一苦労です。1つ1つのサンプルに対し、バラバラの業者に頼む必要も出てくるかもしれないからです。

そこで登場したのが「Material Bank」でした。同社はサンプルデザインのマーケットプレイスを展開しており、5月に1億ドルもの大型調達を実施しています。何百ものベンダーの材料を集約し、複数のパラメータをフィルタリングして、数分で材料の選択を見つけることができるアグリゲーションプラットフォームを提供しています。

午前0時までに注文すれば、Material Bankが提携するどのベンダーからでも翌朝午前10時までにサンプルを受け取ることができる仕組みを確立しています。従来、発送スピードのボトルネックになっていたFedexの仕訳センターのすぐ近くに自社倉庫を展開し、Locus Roboticsと提携したロボットおよび専属の仕訳人がいるため、高速で発送準備を整えることに成功しています。

航空・ホテル予約業界にExpediaやSkyScannerのような多くのアグリゲーターが存在するように、同様の概念をサンプル市場に持ち込み成長を遂げているのがMaterial Bankの体験の良さ、というわけです。

マーケットプレイスとしては「Amazon」、物流網の仕組みとしては大手海運輸入フォワーダー「Flexport」にも似たところがあり、物流業界の一大プレイヤーになる予感がしています。

今週(6月8日〜6月14日)の主要ニュース

オンライン・メンタルヘルスケア「Cerebral」。Image Credit: Cerebral。
オンライン・メンタルヘルスケア「Cerebral」。Image Credit: Cerebral。

メンタルヘルス企業の新生「Cerebral」1.27億ドル調達

創業からたった18カ月しか経っていない月額課金制のオンライン・メンタルヘルスサービス「Cerebral」は、Access Industriesをリードに1億2,700万ドルの資金を調達。本ラウンドにはSilver Lake Waterman、Artis Ventures、Bill Ackman、Chris Burch、そして以前の出資者でもあるOak HC/FT、WestCap、AirAngels、Liquid 2 Venturesも参加した。同社の価値は12億ドルとなった。— 参考記事

メキシコのフィンテック企業「Clip」が2.5億ドル調達

スマートフォンに装着可能な7ドル相当のクレジットカードリーダーをはじめ、さまざまなフィンテック製品を提供する「Clip」は、ソフトバンクとViking Global Investorsをリードに2億5,000万ドルを調達し、評価額は20億ドルを超えた。— 参考記事

オンライン卸業をディスラプトする「Faire」、2.6億ドルの大型調達

セレクトショップ向けオンライン卸売企業「Faire」は、シリーズFで2億6,000万ドルを調達した。Sequioa Capitalがこのラウンドをリードし、Baillie Gifford、Wellington Managementおよび以前からの出資者も加わり、同社の評価額は70億ドルとなった。これは、わずか半年以上前に発表された前回の評価額25億ドルの約3倍にあたる。同社はこれまでに7億ドル弱の資金を調達している。— 参考記事

インド版Neobank「Open」が大型調達の報道

インドのバンガロールを拠点とし、従来の銀行の機能をほぼすべて備えたインド版ネオバンクを語る「Open」は、Temasek、General Atlantic、Tiger Global、Paypalらから、プレマネー評価額6億ドルで、シリーズC資金として約1億ドルの調達を目指していると報じられている。— 参考記事

FacebookがVRゲーム「BixBox VR」を買収

Facebookはシアトルを拠点とする設立5年目の「BigBox VR」を買収した。買収条件は明らかにされていないが、BigBoxは人気のバーチャルリアリティゲーム「Population.One」のメーカー。Shasta Ventures、Outpost Capital、Pioneer Square Labs、GSR Venturesなどから650万ドルを調達している。— 参考記事

空飛ぶタクシー「Kitty Hawk」がかつてのDJI競合「3D Robotics」買収

Googleの共同創業者であるラリー・ペイジ氏が支援する空飛ぶタクシー会社「Kitty Hawk」は、かつてのDJIの競合会社である「3D Robotics」を完全に買収。この買収の一環として、3Dロボティクスの共同創業者であるクリス・アンダーソン氏は、Kitty HawkのCEOに就任する。— 参考記事

ヨーロッパ大手フィンテック「Klarna」、6.39億ドル調達

スウェーデン・ストックホルムを拠点とする後払いサービス「Klarna」は、6億3,900万ドルの追加資金を調達し、資金調達後の評価額は456億ドルに達した。これは、わずか3カ月前の前回の資金調達ラウンドで評価された額の約50%に相当する。今回の資金調達では、ソフトバンクのVision Fund 2がリードし、これまでの出資者であるAdit Ventures、Honeycomb Asset Management、WestCap Groupが加わった。Klarnaはこれまでに約37億ドルを調達している。— 参考記事

ハードウェアウォレット「Ledger」3.8億ドル調達

フランス・パリを拠点とする、自分の暗号資産を管理するハードウェアウォレットを展開する「Ledger」は、10T HoldingsがリードするシリーズCで3億8,000万ドルを調達。ポストマネー評価額は15億ドルとなった。本ラウンドには、以前からの投資家であるCathay Innovation、Draper Associatesらが参加。— 参考記事