GB Tech Trend #017: インフルエンサーとNFTの架け橋になるか、Cameoの可能性

累計調達額は1億6,500万ドル以上。ファンのために制作したタレントビデオは200万本以上。

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1億ドル調達を発表した「Cameo」。Image Credit:Cameo。

執筆: Universe編集部

グローバルテックニュースでは、毎週、世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。

今週の注目テックトレンド

ユーザーが有名人からの動画メッセージを購入できるプラットフォーム「Cameo」が、シリーズCラウンドで1億ドルを調達しました。今回のラウンドを経て、同社はユニコーンのステータスを獲得しました。

累計調達額は1億6,500万ドル以上。e.venturesがリードし、GV(旧Google Ventures)、AmazonのAlexa Fund、UTA Venturesなどの新たな戦略的投資家、SoftBank Vision Fund 2、Valor Equity Partners、Morgan StanleyのCounterpoint Global、既存投資家であるLightspeed、Kleiner Perkins、Spark Capital、Peter Chernin’s Chernin Group、Origin Venturesらが参加しています。

Varietyによると、これまでにCameoがファンのために制作したタレントビデオは200万本以上にのぼり、そのうち約80%は他人へのプレゼント(誕生日、お祝い、ローストなど)として予約されているそうです。2020年には、約1億ドルの総売上高(前年比4.5倍)を達成し、平均注文額は約25%増の約70ドルになったとのこと。また、過去3年間の合計を上回る130万件のメッセージを配信し、1万人以上のコンテンツプロバイダーが新たにCameoに参加。さらに、昨年は150人以上のパーソナリティが10万ドル以上の収入を得ています。

元々、Cameoの共同創業者であったDevon Townsend氏は短尺動画プラットフォーム「Vine」でファンを抱えていたインフルエンサーでもありました。同氏がファンコミュニティがどのような形で運営されているのかなどをよく知っていたことから、Cameoを正しいアプローチで立ち上げられたと言えるでしょう。

今でこそ名だたるインフルエンサーが参加しており多額の取引が発生していますが、サービス立ち上げ当時は5〜10ドル前後であれば課金してくれる「忠実なファン」を抱えるマイクロインフルエンサー獲得を戦略軸に据えていました。

Cameoがターゲットとしてたインフルエンサーは、高い意欲(Willingness)を持っていながら名声(Fame)は持ち合わせていない層の獲得を狙いました。こうした層は熱量の高いファンを往々にして抱えています。そこでインフルエンサーとファンを芋づる式に抱え込む「プロデューサー・エバンジェリズム・ストラテジー」と呼ばれる利用者自らが顧客を連れてくる拡大戦略に打って出ます。

さて、Cameoは盤石なインフルエンサーが稼ぐための収益プラットフォームを築きつつあります。「Fan Club」や、直接映像電話で話すサービス「Cameo Calls」を立ち上げる多角化にも意欲を見せています。ただ、それ以上に昨今のコレクタブル市場との相性に商機があると感じます。 最近話題となっている「NFT(Non-Fungible Token)」を活用したコンテンツ流通戦略がそれです。Cameoで取引される動画コンテンツは、唯一無二であることが絶対条件となるもので、インフルエンサーがその人だけのメッセージを込めることで価値が発生しています。コピーは認められません。

ブロックチェーン上にデジタルコンテンツの取引履歴を記録・公開でき、該当コンテンツが絶対的に唯一性を持っていることを証明できるNFTを組み込めば、Cameoのコンテンツを市場流通させる際に価値を裏付けすることができます。現にCameoのユーザーは自分がお金を払って受け取ったコンテンツをSNS上に公開していることから、コンテンツ流通志向を持っていることがわかります。NFTとしての取引も大いに行われることが予想されます。

現在はコンテンツ作成を依頼する際に料金が発生するモデルのCameoですが、今後はメッセージ動画作成依頼の業態から、NFT売買プラットフォームへと業態を変化させられる可能性を秘めます。インフルエンサーがデジタルNFTを取引できるプラットフォームになれば、いずれは「メタバース」や「バーチャル経済」にも繋がるサービスへと進化しそうです。

今週(3月29日〜4月3日)の主要ニュース

買収交渉が報道された「Discord」。Image Credit: Discord。
買収交渉が報道された「Discord」。Image Credit: Discord。

Microsoft、Discord買収へ動く

Wall Street Journalによると、MicrosoftはDiscordを100億ドル以上で買収する方向で交渉を進めているとのこと。早ければ来月にも買収を発表する可能性があると予想されている。売却が合意に至れば、Microsoftにとっては2016年にLinkedInを266億ドルで買収して以来の大規模なものとなる。— 参考記事

クリエイタープラットフォーム「Substack」、6,500万ドル調達

サンフランシスコを拠点とするライターの収益プラットフォーム「Substack」は、初期出資者であるAndreessen Horowitzのリードにより、6億5,000万ドルの評価額で6,500万ドルの新規資金を調達した。 — 参考記事

WeWorkが上場へ

WeWorkは特別買収目的会社であるBowX Acquisition Corp.と合併することで、同社価値を負債を含めて90億ドルとし、株式公開することで合意した。この取引の一環として、WeWorkはInsight Partners社、Starwood Capital Group社、Fidelity Management社などが運用するファンドから8億ドルを含む13億ドルを、プライベート・インベストメント・イン・パブリック・エクイティとして調達する予定。— 参考記事

公証役場のオンライン化「Notarize」1.3億ドル調達

オンライン公証プラットフォーム「Notarize」は、Canapi Venturesをリードに1億3,000万ドルのシリーズD資金を調達した。今回の資金調達には、CapitalG、Citi Ventures、Wells Fargo、True Bridge Partnersのほか、多くの投資家が参加。同社は累計2億1,300万ドルを調達し、評価額は7億6,000万ドルとなった。— 参考記事

シーズンオフECプラットフォーム「Otrium」1.2億ドル調達

オランダを拠点とするオンラインファッション小売「Otrium」が、BONDとIndex Venturesがリードし、Eight Roads Ventureが参加するシリーズCラウンドで1億2,000万ドルを調達した。これは、Otriumの米国進出に伴うもので、これまでに約1億5,800万ドルを調達している。— 参考記事

データドリブン天気予報「ClimaCell」7,700万ドル調達

天気予報サービスを展開する「ClimaCell」がシリーズDラウンドとして7700万ドルを調達した。Stonecourt Capitalがこのラウンドをリードし、Highline Capitalなどの投資家が参加した。— 参考記事

コーポレートカード「Ramp」合計1.1億ドルの調達

ニューヨークを拠点とするコーポレートカード・スタートアップ「Ramp」は、6,500万ドルと5,000万ドルの資金調達をそれぞれに行ったという。企業価値は6,500万ドルの調達時には11億ドルで、5,000万ドル調達時には16億ドルへと成長。D1 Capital Partnersが6,500万ドルのラウンドをリードし、Stripe、Coatue Management社、Goldman Sachs社などの投資家が参加した。また、Stripeは2回目の5,000万ドルをリードしている。— 参考記事

家族のための福利厚生「Cleo」4,000万ドル調達

家族向け福利厚生プラットフォーム「Cleo」は、シリーズC資金として4,000万ドルを調達した。Transformation Capitalがこのラウンドをリードし、Glynn Capital、PruVen Capital、Gaingels、Greylock、NEA、Felicisなどの投資家が参加した。— 参考記事