GB Tech Trend #015: 「サブスク料金立て替え」のPipe、SaaS時代の新たな投資モデル

2020年2月に600万ドル、6月には1,000万ドル、そして先日5,000万ドルの調達を果たしています。

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5,000万ドルの調達を果たした「Pipe」。Image Credit: Pipe。

執筆: Universe編集部

グローバルテックニュースでは、毎週、世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。

今週の注目テックトレンド

在宅生活が当たり前になり、それに伴いSaaS企業が躍進しています。そんな中、SaaS企業向けフィンテックスタートアップが登場しました。名前は「Pipe」です。2020年2月に600万ドル、6月には1,000万ドル、そして先日5,000万ドルの調達を果たしています。SaleforceのMarc Benioff氏や、AngelistのNaval Ravikant氏、他にもShopifyなどが出資しており、多くの投資家から注目を集めています。

PipeはB2B SaaS企業の収益回収モデルを変えようとしています。従来、SaaS利用企業は四半期や半年、年間契約を結びながら月額で利用料を支払ってもらうケースが大半でした。利用企業にとってはキャッシュアウトを抑えられ、コスト予測が出来るため年契約月額支払いは便利です。

他方、SaaS提供企業は契約金回収までの期間がかかってしまいます。特に立ち上げ時期は開発コストがかさむため初期費用がかかります。契約を獲得して成長スピードを上げたいが、契約金が手元に来るまで時間がかかる場合、新たに資金調達をして株式を放出するしかないと考えてしまいます。キャッシュフローと成長のトレードオフです。

そこでPipeはMRR(Monthly Recurring Revenue)をARR(Annually Recurring Revenue)へ即時転換できる投資プラットフォーム、言い換えれば「年間サブスクの建て替え」を提供しています。

仕組みはこうです。投資家がSaaS企業のビジネス健全性に基づいて多少割引した価格で年間サブスク額を購入します。購入金額は一括でSaaS企業に入り、月額収益がPipe経由で投資家の手に渡る、というわけです。Pipeの利用企業はサブスクの年間価格とほぼ同額のキャッシュが提供されるので、顧客のサブスクリプションの年間価値全額をすぐに自社資金とすることができるのです。

現在のPipeのモデルは、創業者が会ったとあるスタートアップファウンダーが、顧客に年間契約前払いを促すために収益を40%も割引し、同時にキャッシュフローのギャップを埋めるため資金調達していたことを課題に感じたことから生まれたそうです

SaaS企業にとって、顧客企業と年間一括契約を結ぶために提示していた大幅ディスカウントは深刻な問題です。そこでPipeは、高いディスカウントなどせずとも素早く予測収益が回ってくるように投資家とのネットワークを整えました。こうすることで、ACV(Annual Contract Value)を限りなく高い率で維持することができるようになりました。

Gartner」によると、世界のパブリッククラウドサービス市場は、2020年には収益が2664億ドルに成長し、2019年の2880億ドルから17%増加すると予測されています。リカーリングモデルが当然となる中、Pipeのようなモデルは国内でも可能性がありそうです。

今週(3月15日〜3月21日)の主要ニュース

大手Webサイトビルダー「SquareSpace」。Image Credit: SquareSpace。
大手Webサイトビルダー「SquareSpace」。Image Credit: SquareSpace。

ウェブサイトビルダー・ホスティングサービス「SquareSpace」3億ドル調達

ウェブサイトビルダー企業「SquareSpace」は、3億ドルの資金を調達し、同社の価値を100億ドルに引き上げた。新たな出資者には、Dragoneer、Tiger Global Management、D1 Capital Partners、Fidelity Management & Research Company、T. Rowe Price Associatesが顧問を務めるファンドや口座、Spruce Houseなどが名を連ねている。以前からの出資者であるAccelとGeneral Atlanticも参加している。— 参考記事

アジア人向けInstacart「Weee!」3億ドル調達

カリフォルニア州フレモントに拠点を置く、ヒスパニック系およびアジア系の食品を専門とするオンライン生鮮食品サービス「Weee!」は、3億ドルを超える資金を調達し、その価値は28億ドルに達した。DST Global社がこのラウンドをリードし、Blackstone Growth、Arena Holdings、Tiger Globalらが散開している。— 参考記事

オンデマンド・フルフィルメント「Flowspace」3,100万ドル調達

オンデマンド倉庫フルフィルメント企業「Flowspace」は、シリーズB資金として3,100万ドルを調達。今回のラウンドでは、BuildGroupがリードし、Canvas Ventures、Industrious Ventures、Moment Ventures、1984 Ventures、eGateway Capital、Y Combinatorなどが参加している。— 参考記事

対Spreadsheetとして成長する「Airtable」2億7,000万ドル調達

ノーコード・データベースとして25万の顧客を持つ「Airtable」は、シリーズE資金として2億7000万ドルの調達を行った。企業価値は57.7億ドルにもなった。今回のラウンドでは、Greenoaks Capitalがリードし、WndrCo、初期の投資家であるCaffeinated Capital、CRV、Thriveが参加した。今回のランドにより累計調達額は6億1,700万ドルを達成したこととなった。— 参考記事

仮想通貨を中心とする取引所「Bitpanda」7,000万ドル調達

ビットコインやその他のデジタル資産だけでなく、金や既存の株式にも誰でも簡単に投資できるようにするとしている、オーストリア・ウィーンを拠点とする取引所「Bitpanda」は、シリーズBラウンドで1億7,000万ドルを調達・ポストマネー企業評価額は12億ドルとなった。Valar Venturesが同社の5,200万ドルのシリーズAラウンドをリードしてからわずか6カ月で、本ラウンドを達成。DST Globalらが出資をした。— 参考記事

フィンテックAPIの代名詞「Stripe」6億ドル調達

決済APIを提供する「Stripe」は、新たに6億ドルの資金調達を行い、その評価額は950億ドルに達した。今回の資金調達には、Allianz Gruopのデジタル投資部門、Axa SA、Baillie Gifford、Fidelity Management & Research Co.、Sequoia Capital、アイルランド国家財務管理庁などが主要な投資家として名を連ねている。— 参考記事

インドで急成長するSNS「Kutumb」が調達間近か

インドを拠点とする設立7カ月のSNS企業「Kutumb」が、Tiger Global Managementとの間で、1,500万ドルから2,000万ドルの資金調達について交渉中であり、ポストマネー企業評価額は1億7,000万ドルになるとTechCrunchは伝えている。同社はインドに根付く様々な文化、信条、信念、興味、職業に基づいてコミュニティを結びつけ、急速に成長しているサービスである。— 参考記事