GB Tech Trend #014: Clubhouse配信を可能にする「ライブAPI経済圏」

Instagram、Facebook、SHOWROOM、他にはゲーム配信アプリに至るまで、様々なプレイヤーがリアルタイム配信を通じたコミュニケーションサービスを展開するようになっています。

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1,500万ドル調達を果たした「Daily」。Image Credit: Daily。

執筆: Universe編集部

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今週の注目テックトレンド

「ライブ配信」が多くのアプリに実装されるようになりました。Instagram、Facebook、SHOWROOM、他にはゲーム配信アプリに至るまで、様々なプレイヤーがリアルタイム配信を通じたコミュニケーションサービスを展開するようになっています。

問題となるのはエンジニアが抱えるライブ配信機能実装コストと、通信の不安定さです。0からライブ配信機能を作り上げるとなった場合は非常に手間がかかりますし、何か通信設計に問題があると、配信が中断されてしまたり遅延してしまい、サービスの評判が著しく落ちかねません。

そこで登場したのが今回1,500万ドルの調達を果たした「Daily」です。ライブ動画・音声配信の開発プラットフォームを提供しており同社APIを導入すれば、自社サービスにライブ機能を手軽に追加することが可能となります。

エンジニアはあらかじめ構築されたUIを使用するか、独自のカスタムビデオUIとUXを構築するかのどちらかを選ぶことができるそうです。前者の場合、ビデオチャット、画面共有、録画機能を備えたビデオ通話ウィジェットを埋め込むことができます。後者の場合、レイアウト、ワークフロー、ビデオおよびオーディオ トラックをより自由にコントロールできます。

顧客にはバーチャルオフィスサービス「Tandem」、バーチャルHQプラットフォーム「Teamflow」、プレゼンテーションサービス「Pitch」、ペアプログラミングツール「GitDuck」、バーチャルリクルーティングサービス「Flo Recruit」など、コロナ禍において成長を果たした企業が名を連ねています。

Dailyの競合となるのが「api.video」です。同社はホスティング・配信・分析ができる、動画配信のための単一APIを開発しています。どの開発者でも手軽にNetflixのような高画質の動画コンテンツをユーザーに提供できるようになりました。これまで企業は実装の複雑さを理由に動画機能の導入を控えていましたが、api.videoはわずか数行のコードで動画コンテンツの導入を可能にしています。

また、目覚ましい成長を遂げるライブ音声配信アプリ「Clubhouse」が採用する「Agora.io」も競合として数えられるでしょう。同社もBaaS(Backend-as-a-Service)企業として、アプリケーション開発者にリアルタイム・コミュニケーションソリューションを提供しています。音声基盤構築に強く、遅延のないコミュニケーションが売りです。

Agora.ioの参入する通信PaaS(Platform-as-a-Service)市場は、2018年の33億ドルから2023年には172億ドルに成長し、成長率39.3%で拡大すると予測されています。5Gの普及が進めば、さらにリアルタイムコミュニケーションの需要も増えるでしょう。

Stripeが“決済”を、Twilioが“SMS”を容易にしたように、「Daily」「api.video」「Agora.io」らはすべての開発者に“ライブ配信機能”を提供します。誰もが当たり前に使う媒体(テキスト・画像・動画・音声 etc)を手軽に実装するニーズは市場全体で高まっており、こうしたニーズを支えるインフラ市場に大きな商機が眠っているでしょう。これから日本でもますます注目領域になりそうです。

今週(3月8日〜3月14日)の主要ニュース

3億7,600万ドルもの大型調達を果たした「Starling Bank」。Image Credit: Starling Bank。
3億7,600万ドルもの大型調達を果たした「Starling Bank」。Image Credit: Starling Bank。

19億ドル評価の大型調達「Starling Bank」

英国を拠点とするチャレンジャーバンク「Starling Bank」は、2億7,200万ポンド(3億7,600万ドル)のシリーズD資金調達を行い、資金調達後の評価額が19億ドルとなった。Fidelityがこのラウンドをリードし、Qatar Investment Authority、Railpen、Millennium Management.らが参加した。— 参考記事

SaaS企業の資金調達プラットフォーム「Pipe」が5,000ドル調達

創業わずか20カ月の資金調達プラットフォーム「Pipe」が新たに5000万ドルの資金調達を行った。スタートアップと機関投資家を結ぶ事業を展開しており、投資家がSaaS企業のビジネス健全性に基づいて、多少割引した価格で年間サブスク額をその場で投資。SaaS企業からすればすぐに資金が手に入る。投資金はSaaS企業に入り、月額収益がPipe経由で投資家の手に渡る仕組みだ。Siemens’ Next47 とRaptor Groupが共同でこのラウンドをリードし、Shopify、Slack、HubSpot、Okta、Social CapitalのChamath Palihapitiya氏、SalesforceのMarc Benioff氏らが出資している。— 参考記事

ギグワーカー向け保険サービス「Zego」が1.5億ドル調達

ロンドンを拠点とする保険スタートアップ「Zego」が、シリーズCで1億5,000万ドルの資金調達を行った。同社はギグエコノミーの労働者向けに柔軟性の高いバイク保険を提供し、現在では商用自動車保険商品にまでサービスを拡大させている。DST Globalがこのラウンドをリードし、General Catalyst、Target Global、Balderton Capital、Latitudeなどの出資者がいる。— 参考記事

音楽APIサービス「Songclip」1,100万ドル調達

アプリユーザーが音楽を検索・共有したりするための機能を開発者に提供するAPIサービス「Songclip」が1100万ドルの資金調達を行った。Evolution VC Partnersがリードし、The Kraft Group、Michael Rubin、Raised in Space、Gaingels、Forefront Venture Partnersらがラウンドに参加。同社の資金調達総額は2300万ドルとなった。— 参考記事

垂直農業「Infarm」が1億ドル調達

ドイツのベルリンに拠点を置く垂直農業会社「Infarm」は、1億ドルの資金調達を達成した。生鮮食品を消費者の近くで栽培するために都市部の農場のネットワークを構築。Hanaco VenturesとAtomicoが出資しており、Hanacoは昨年9月の1億7000万ドルのシリーズCラウンドにも参加している。— 参考記事

対Google「Neeva」4,000万ドル調達

米カリフォルニア州マウンテンビューに本社を置く検索エンジン「Neeva」は、新たに4,000万ドルの資金調達を行った。GreylockとSequoia Capitalがリードで資金調達後の評価額3億ドルとなった。長年グーグルの重役を務めてきたSridhar Ramaswamy氏が設立したスタートアップで、広告主に見てもらいたい検索結果ではなく、ユーザーが望む検索結果を得るために月額5ドルから1,000ドルの料金を請求するモデルで検索エンジンを提供する。— 参考記事

自動配達ロボット「Refraction AI」420万ドル調達

ラストマイル配達のための自動配達ロボットを開発する「Refraction AI」は、シードラウンドで420万ドルを調達している。Pillar VCがリードを務め、eLab Ventures, Osage Venture Partners, Trucks VC, Alumni Ventures、Invest Michiganらが参加した。— 参考記事

遠隔医療プラットフォーム「TytoCare」5,000万ドル調達

ニューヨークに拠点を置く、オンデマンド遠隔検診用モジュール・デバイスと遠隔医療プラットフォームを併せて提供する「TytoCare」は、昨年調達した5000万ドルのシリーズD資金調達に加えて、5000万ドルの追加シリーズD資金調達を行った。Insight Partnersがリード、Tiger Global Management、Qumra Capital、Qualcomm Ventures、Olive Tree Ventures、Shenzhen Capital Group Companyが参加した。 — 参考記事