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GB Tech Trend #012: 「デジタルツイン」と「天候の科学」

航路上の天候を的確に予測することで、4.1億〜11.6億ドルの損失をカバーできるとしています。

今回紹介するリアルタイム天候情報を提供する「ClimaCell」。Image Credit: ClimaCell。
今回紹介するリアルタイム天候情報を提供する「ClimaCell」。Image Credit: ClimaCell。

執筆: Universe編集部

グローバルテックニュースでは、毎週、世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。

今週の注目テックトレンド

IoTやドローン、飛行機などから発せられるデータポイント、無線Wifiの回線状況を解析することで、全米各地の天候情報を把握するサービスを提供する「ClimaCell」が、小型人工衛星を2022年後半に打ち上げる計画を発表しました。同社は2020年7月、2,300万ドルのシリーズCラウンドの調達を発表しています。

Taylor & Francis」のデータによると、米国航空市場で発生する事故・故障損失額は16.4億〜46.4億ドルに上るそうです。なかでも25%が天候不順によって発生するとも報告されており、航路上の天候を的確に予測することで、4.1億〜11.6億ドルの損失をカバーできるとしています。

そこでClimaCellは各地の天候を緑・黄・赤色のドットで表示し、どの場所の通信と天候が良いのかを一目でわかる「マイクロウェザーモデル/API」を開発しました。確実に通信環境と天候の良いスポットをリアルタイム、かつ的確に把握できるようになったのです。

分析して得られた気象データは、気象衛星から送られてくるデータと比較して、低コストかつ高精度なデータソースとなり得ることから、非常に高い提供価値を持っています。ここでのClimaCellの強みは、常に変化する天候・気象環境を把握できている点にあります。こうしたメリットを活かし、航空業界等でサービスが利用されています。

今回の小型衛星打ち上げに関しても同様の強みを発揮します。従来の衛星情報では3日に1度しか同じ地域を観測できませんでしたが、ClimaCellの衛星群を使えば1時間に一度観測が可能になり、より正確に特定地域の気象データを取得することができます。

ClimaCellの真価は「デジタルツイン」に繋がります。

物理世界のリアルタイムデータを取得、デジタル世界でデータを分析して予測、未来に起こる事象から逆算してアクションを起こす一連の流れがデジタルツインの大まかなフローです。事前予測をして物理世界のアクションを最適化するのです。

たとえばClimaCellで収集された気象データから、特定ポイントAに1時間後、雨雲が発生すると予測されるとします。航空会社はAPIを通じてClimaCellのデータをリアルタイムで持っているため、この気象予報から運行中の飛行機に「ポイントAは避けてください」と自動で指示出しをすることができます。

まさに物理世界のデータから事前予測をして、自動的に最適な行動を決定づけられる体験です。事実、同社は気象データの予測に基づいて様々な事業者の意思決定を支援するインサイトサービスに重点を置いていくことを表明しています。

別の例で言えば、嵐が来たときに建設現場が安全であることを確認し、強風が来るのならばいつクレーン操作を停止すべきかの決定であったり、物流会社が大雨のために速度がいつから落ち始めるのか、それによって荷物の到着がどのくらい遅れると予想され、その旨をどのタイミングで顧客に伝えるべきかの行動決定の予測をサポートしていたりします。

ClimaCellはまさに、物理世界の事象をAIによって解析し、意思決定を助けるデジタルツイン企業であると考えられるでしょう。このように、各企業がデジタルツインの座組みから考えてどのような戦略を5〜10年のスパンで打ち出せているのかを予想すると、さらに深く企業分析などができるかもしれません。

今週(2月22日〜2月28日)の主要ニュース

Twitterからの買収案が取り沙汰された「ShareChat」。Image Credit: ShareChat。
Twitterからの買収案が取り沙汰された「ShareChat」。Image Credit: ShareChat。

Twitterがインド大手SNS買収仕掛ける

Twitterがインドに拠点を置くSNS企業「ShareChat」との買収交渉を行ったと報じられた。Twitterは11億ドルの買収額を提示し、ShareChatへの9億ドルの投資をする旨を伝えた。しかし、取引合意には達しなかったという。ShareChatの投資家であるTwitterは、同社が保有する短尺動画アプリ「Moj」を擁してTikTokとの競争に備えようとしていたとのこと。— 参考記事

短尺Podcast「Podimo」1,120万ドル調達

コペンハーゲンを拠点とする、短尺Podcastコンテンツを提供するサブスクリプション型サービス「Podimo」は、1120万ユーロの追加資金調達を行った。このラウンドはChr. Augustinusの投資ファンドがリードしており、同社が1500万ユーロのシリーズAラウンドを発表してからわずか8カ月後のことである。既存の投資家やスペインのベンチャー企業Aldea Opportunity Fundも参加している。— 参考記事

Podcastマーケットプレイス「Acast」が同じくPodcastプラットフォームの「RadioPublic」を買収

ストックホルムに拠点を置く、プレミアムホスティング・配信・広告販売を提供するPodcastマーケットプレイス「Acast」は、ボストンに拠点を置くPodcast配信プラットフォーム「RadioPublic」を買収した。Acastはこれまでに1億3,000万ドル以上を調達している。また、RadioPublicはBose VenturesやProject 11 Venturesなどの企業から500万ドル近くを調達している。— 参考記事

米国初の認可ネオバンク「Varo Bank」6,300万ドル追加調達

昨年、米国初のネオバンクとして認可を受けた「Varo Bank」が、新たに6300万ドルの資金調達を行った。同ラウンドは、NBAスターのRussell Westbrook氏がリードしており、他の出資者には無名のVC、ファミリー・オフィス、個人などが含まれているという。同社は昨年、シリーズDの資金調達で2億4,100万ドルを調達している。以前の出資者には、Warburg Pincus、The Rise Fund、Gallatin Point Capital、HarbourVest Partners、BlackRock が管理するファンドが含まれており、累計4億8,240万ドルを調達している。— 参考記事

数学チートアプリ「Photomath」2,300万ドル調達

数学学習アプリ「Photomath」が、シリーズBの資金調達で2300万ドルを調達した。Menlo Venturesがラウンドをリードし、GSV Ventures、Learn Capital、Cherubic Ventures、Goodwater Capitalなどの投資家が参加した。同アプリは数式を撮影することで、瞬時に答えを導き出すチートサービスとして人気を博している。— 参考記事

Yes/No質問型投機プラットフォーム「Kalshi」3,000万ドル調達

経済学から天気、公共問題まで、未来の出来事に関するYes/Noの質問に賭けて取引を行えるオンライン投機プラットフォーム「Kalshi」は、Sequoia Capital、Charles Schwab、Henry Kravis、SV AngelからシリーズAの資金調達で3,000万ドルを調達した。同サービスは未だ正式ローンチはされていない。— 参考記事

無人店舗向け決済システム「Standard Cognition」1億5,000万ドル調達

自動決済ソリューションを提供する「Standard Cognition」は、評価額が10億ドルを超える1億5,000万ドルのシリーズC資金調達を行った。SoftBank Vision Fund 2がこのラウンドをリードし、SK Networksと初期の出資者であるCRV、EQT Ventures、TI Platform Managementらが参加した。— 参考記事

ダウンロード不要モバイルゲームプラットフォーム「Artie」1,000万ドル調達

アプリの追加ダウンロードやAPIアクセス連携を必要とせず、人気のソーシャルアプリ上ですぐに共有・プレイできるモバイルゲーム・プラットフォームを提供する「Artie」は、Zynga創業者のMark Pincus氏、Thirty Five Ventures、Scooter Braun’s Raised In Space、Shutterstock創業者のJon Oringer氏、Tyler and Cameron Winklevoss、Susquehanna International Groupなどから1,000万ドルの資金調達を行った。— 参考記事