GB Tech Trend #010: Pinterest買収へ動いていたMicrosoft

背景には、Microsoftが「Azure」の導入を大規模に進めたいという戦略が見え隠れしています。

GB Tech Trend #010: Pinterest買収へ動いていたMicrosoftのカバー画像
買収が取り沙汰されたPinterest。Image Credit: Charles Deluvio。

執筆: Universe編集部

グローバルテックニュースでは、毎週、世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。

今週の注目テックトレンド

「Microsoft」が画像発見・共有アプリ「Pinterest」に対して買収案を持ち出していたと報道されました

同アプリは510億ドルの企業価値を持つSNSです。コロナ禍でテック企業株が軒並み上昇する中、同社も例に漏れず市場価値が600%以上増加しています。ただ、Microsoftも企業価値を80%ほど上昇させており、Pinterestは自社価値の3%に過ぎません。

さて、買収提案の背景には、Microsoftがクラウドコンピューティングサービス「Azure」の導入を大規模に進めたいという戦略が見え隠れしています。

昨年のTikTok米国事業部門の買収を仕掛けた際も同様の戦略に沿ったものと言えるでしょう。実際、同社は2016年に「LinkedIn」を260億ドルで買収し、「Github」や1.3億ユーザーを突破した「Minecraft」などの名だたるコンシューマ向けオンラインプラットフォームサービスも手中に納めています。これは総じてAzureの導入を率先させる意図があったからです。インフラ導入を中心に進めれば良いため、買収後であったとしてもプロダクトの方向性にMicrosoftはあまり関与しないと考えられます。

Microsoftの場合、他のBig Tech企業とは買収企業への扱いが違います。FacebookやAmazonは競合サービスを成長し切る前に買収してノウハウを完全に奪い切ります。もし買収に失敗した場合はコピーサービスを立ち上げて徹底的に潰しにかかることがあります。

他方、Microsoftの場合はAzureの導入を意識しているため、コンシューマ向けプロダクトの中枢を担うコミュニティの方向性などにはあまり口を出さない印象です。買収前と変わらず、Microsoftブランドの影響が及ばないほどにユーザーコミュニティが自然と成長し続ける様を受け入れています。その分、AIを成長させるだけの膨大なビックデータ獲得と、Azureの活躍の場が提供されれば良いといった方針です。

今回報道されたPinterestはAWSを活用していると言いますが、仮に買収が成功すればAmazonからまた大口顧客が消えることとなるでしょう。

最大の関門はPinterestへの説得というよりも、Big Tech企業の大型買収を通じた市場寡占への憂慮です。今のところ積極的な買収合意への動きはないと報道されていますが、仮にディールが成立したとても、すぐに買収が決定することはないでしょう。いずれにせよ、今後のMicrosoftのコミュニティ系サービス買収の動きに注目が集まります。

今週(2月8日〜2月14日)の主要ニュース

上場を目指すMatterpot。Image Credit: Matterport。
上場を目指すMatterpot。Image Credit: Matterport。

VR内見サービス「Matterport」上場へ

不動産のバーチャルウォークスルー用ソフトウェアを開発する「Matterport」は、Alec Gores氏が支援する企業との合併による株式公開に合意したと発表している。この取引では、MatterportとGores Holdings VIの株式価値を29億ドルとし、取引をサポートするためTiger Global Management、Senator Investment Group、Dragoneer Investment Group、Fidelity Management & Research Co.などの投資家から約2億9500万ドルの資金調達を行う。Matterportは以前、Lux Capital、DCM、Qualcomm Venturesなどの投資家から1億1400万ドルを調達していた。— 参考記事

DoorDashがロボットカンパニー「Chowbotics」買収

宅配サービス「DoorDash」は、より多くのゴーストキッチンを開発することを目的に、サラダ作りに特化したロボット「Sally」を開発するロボット企業「Chowbotics」を買収すると報道された。同社はFoundry GroupやTechstarsなどから2100万ドルを調達していた。取引条件は明らかにされていない。— 参考記事

米国大手掲示板サイト「Reddit」2.5億ドル調達

インターネット掲示板「Reddit」は、同サイトに対する世間の再注目を受けて、Vy Capitalが率いる60億ドルの企業評価価値で2億5000万ドルのシリーズE資金調達を行った。同社は2019年2月にTencentがリードしたシリーズDの資金調達で3億ドルを調達している。当時は30億ドルと評価されていた。— 参考記事

農作物宅配サービス「GrubMarket」9,000万ドル調達

サンフランシスコに拠点を置く農産物宅配会社「GrubMarket」は、9000万ドルのシリーズD資金を調達した。投資家にはBlackRock、ACE and Company、Celtic House Venture Partners、Sixty Degree Capital、The Strand Partners、Reimagined Ventures、Trinity Capital Investment、Madison Bay Capital Partners、Marubeni Ventures、GGVなどが名を連ねている。— 参考記事

物流最適化サービス「Nextmv」800万ドル調達

物流企業の意思決定モデルの最適化とテストを行うプラットフォーム「Nextmv」は、FirstMark CapitalがリードしたシリーズAの資金調達で800万ドルを調達した。このラウンドには他にも2048、Dynamo、Atypicalのほか、GitHubのCTOであるJason Warner氏、StripeのCOOであるClaire Johnson氏など、多数の個人投資家が参加している。— 参考記事

ウェブサイトのアクセシビリティ改善を行う「AccessiBe」2,800万ドル調達

企業のADA準拠化を支援するアクセシビリティ・オーバーレイを提供する「AccessiBe」が2800万ドルのシリーズAを調達。ブラインドユーザーらがWebサイトに問題なくアクセスできるようにする。— 参考記事

パーソナル・オーディオ体験を作る「Aflorithmic」130万ドル調達

AI音声合成とボイスクローンを使ってパーソナライズされたオーディオ体験を作る「Aflorithmic」は、130万ドルのシードファンディングを完了した。出資者には、インフルエンサーを活用したソーシャルコマースとマーケティングに注力するオーストラリアのCrowd Media Holdingsが挙げられる。— 参考記事

Appleの次世代ヘッドセット端末報道

Appleが開発を進めるXRヘッドセットは3,000ドルの値段になる可能性があり、8Kディスプレイと12台以上のカメラを搭載していると報じられた。— 参考記事