特許でホワイトスペースを確保──事業拡大の裏側にあった、新興SaaSの知財戦略
サステナビリティ情報開示支援クラウド「SmartESG」を提供するシェルパ・アンド・カンパニーが、グローバル・ブレインと取り組んだ知財戦略構築と特許権利化活動の取り組みをご紹介します。

Point
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知財活動は「シリーズA」
前後から始めるのが重要 -
事業戦略を把握する「CEO自身」
のコミットが何より大切 -
知財は事業戦略とリンクさせることで真価を発揮する
サステナビリティ情報開示支援クラウド「SmartESG」
そこで同社では、国内最大級の独立系VCであるグローバル・ブレイン(GB)
セールスやマーケティングではなく、知財がいかに競合の牽制に寄与し、事業成長に貢献するのか。知財活動で注力した要点について、シェルパ 代表取締役CEOの杉本 淳氏と、GB知財チームの小野寺 聖が語りました。
AI時代のSaaSは、優位性が築きづらい
──まず、近年のSaaSスタートアップを取り巻く環境の変化について伺わせてください。特にAIの普及によって、機能開発で優位性を築く難易度は変わってきているのでしょうか。
シェルパ・杉本:難易度は増していると思います。やはりAIが台頭してきたことで、プロダクト開発のスピードは劇的に上がりました。それ自体は良いことなのですが、裏を返せば、自分たちが作った機能を競合他社もAIを使ってスピーディーに追従できるようになったということです。実際に私たちとしてもそうした危機感はあります。
また、当社が提供している「SmartESG」
GB・小野寺:私たち知財チームはシェルパさんに限らず常時複数のスタートアップを支援していますが、各社の状況を見てもAIによる競争の激化を感じます。
杉本さんがおっしゃる通り、AIを使ってこれまで以上に多くの人が簡単にプロダクトを作れるようになりました。極端な言い方をすれば、各社が「同じようなもの」
そこで重要になるのが、競合に何かしらの「牽制」
AIで比較的簡単に作れる機能であったとしても、「自分たちが1番最初に発案し、権利として持っている」
──シェルパさんが知財活動を本格化させたのは約2年前とのことですが、きっかけは何だったのでしょうか。
シェルパ・杉本:1番のきっかけはGBさんから投資いただいたことです。GBの担当キャピタリストの方から「知財はしっかり意識した方がいい」
当時はプロダクトの導入企業数が5社、10社と伸び、コアとなる機能も形成されつつありました。プロダクトの形や「勝ち筋」
徹底した特許調査で見えてきたブルーオーシャン
──知財活動は具体的にどのようなことから着手されたのでしょうか。
GB・小野寺:ちょうど知財活動をご一緒し始めるタイミングで、特許庁の主催する「IP BASE AWARD」
彼らの特許出願の状況を調べてみると、相当数の特許出願をしているとわかりました。そこで、まずはESG関連のプロダクトを提供している主要な4〜5社について、徹底的な特許調査を実施。その結果、ESGの「E(環境)
一方でESGの「S(社会)
実はそこがまさに、シェルパさんが元来の強みとして提供している領域です。「S(社会)
シェルパ・杉本:この調査結果は大きかったですね。私たちはESGの「E(環境)
当社は、まだ誰も手をつけていなかったサステナビリティ・ESG情報開示支援市場にファーストエントリーで入り、市場そのものを作っていく立ち位置でした。そうした強みをしっかり知財で守り、広い権利を押さえることは重要な戦略だと感じましたね。
──知財戦略が決まった後の流れも聞かせて下さい。「SmartESG」
GB・小野寺:その機能が「顧客に響いているかどうか」
権利化すべきかどうかは、単に機能に新しさがあるかだけでは決まりません。「シェルパさんはなぜそれを実装したいのか」
顧客から支持されている機能は、競合も必ず真似したくなります。だからこそ、他社に牽制をかけられるよう、顧客価値の高い部分から権利化を進めました。
──LLM関連の特許を取得されたとのことですが、LLMが関わる特許ならではの難しさはありますか。
GB・小野寺:LLM関連技術の難しさは、プロダクトの内部で動く「プロンプト(指示)
そのため、「LLMを使っていること」
私たち知財チームでは、あらゆる投資先企業のAI・LLM特許を90件ほど取得支援してきているので、こうした特許のナレッジは積みあがってきていますね。
知財は「事業戦略」とリンクするのが重要
──一連の知財活動を通しての手応えや効果をどのように感じていますか?
シェルパ・杉本:1番の効果は、社内の意識変革と事業戦略への組み込みです。いまでは新しい機能を作る際に「どうやってこれを特許化できるか」
現在新規プロダクトも開発中ですが、開発定例の中で「今回はこれを特許に取りたい」
──知財活動自体は、特許事務所などの力を借りて自社だけで進めることも可能かと思います。今回のようにGBの知財チームが入る意義や役割をどのように感じられましたか。
シェルパ・杉本:小野寺さんは私たちと特許事務所の間に立つ「翻訳者」
私たちには「こういうものを権利化したい」
そういったときに小野寺さんが間に入って、「こういう特許の取り方でいいですか?」
GB・小野寺:そこは私たちとしても意識している点です。スタートアップと特許事務所が直接やり取りすると、情報の非対称性が大きく、事業戦略と乖離した「使いにくい特許」
私たちは株主として投資先企業の事業計画やピッチ資料も把握していますから、事業戦略を踏まえたうえで権利化を優先すべき特許を見極めるお手伝いができます。
もちろん投資先企業の皆さんのご協力も欠かせません。シェルパさんの場合は社内にドキュメント文化が浸透していて、仕様書に「顧客への提供価値」
意識すべきは「タイミング」と「CEOのコミット」
──最後に、これから知財活動に取り組もうと考えているスタートアップの起業家に向けて、アドバイスをお願いします。
シェルパ・杉本:タイミングとしては、シリーズA前後が良いのではと思います。シード期はとにかくプロダクトを作ることが最優先ですが、シリーズAの段階になると、ある程度プロダクトの方向性が定まり、顧客からの要望も増え、競合も見えてきます。そのタイミングで、プロダクトをどう守るかを考え始めるのがベストです。
そして何より重要なのは、「CEO自身がコミットすること」
GB・小野寺:私も同感です。最近はスタートアップ同士の特許に関する争いも増えてきていると感覚的に感じますし、知財の重要性は業界全体で高まっています。「いつの間にか競合に特許を取られていて身動きが取れない」
特にシェルパさんのように、市場を作るファーストエントリー企業であればあるほど、最初に広い権利を取っておくことで、後から入ってくる競合に対して優位性を保てます。
もしGBのような知財支援機能を持つVCから出資を受けているなら、それを使わない手はありません。社内に専門家がいなくても、私たちのような存在をうまく使うことで、強力な知財ポートフォリオを構築できるはずです。
シェルパ・杉本:知財は「専門家に任せないとできない領域」
今後私たちはリーガル・知財担当者の採用も進め、知財戦略をさらに強化していく予定です。GBさんと取り組んだ知財の知見を踏まえながら、「SmartESG」
(編集:GB Brand Communication Team)
杉本 淳
シェルパ・アンド・カンパニー株式会社
代表取締役CEO
小野寺 聖
グローバル・ブレイン株式会社
Director
IP Talent